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イルーシェン君が答えてくれたので、私もぼちぼちと書き始めている。
テーマは『アクスヘイムに来る前の話』
長ったらしくなるのが目に見えているので、できたところからのんびりと更新していく予定。
まさしく私の私による私のための記事のためガチ誰得。この記事は回れ右推奨です。
それは、当たり前に身近にあったもの。
それは、当然のように隣に存在したもの。
幼い頃の記憶。鮮明に思い出されるのは、
母親代わりだった人の手の温もりと、
――他の人には見えない仮面
―――――
「危ないから、外に出ちゃ駄目よ?」
物心ついた時から“そこ”にいたと思う。屋根裏部屋のような場所が私の『世界』だった。
薄暗い部屋。敷き詰められた本棚。1つしかない窓から見えるのは狭い空。
外の世界というのは、窓から覗くだけのもの。天気以外では変わり映えのしない光景。
唯一、この『世界』から出られる扉は基本的には鍵がかけられていて開かない。
開く時には母親代わりの人――今では名前も思い出せない――が開けてくれて、色々世話をしてくれていた。
尽くしてくれていたのだと思う。
とにかく身の回りで困ることはなかったし、本のお陰で知識にも、退屈にも困ることはなかった。狭いなりにそこにいれば十分な程、全てがあった。
ただ1つ、外へ出たいというと、彼女はああ言うのだ。
だから、私はここにいる。その時に見せる悲しげな顔と、歪な仮面を見たくないからだ。
―――――
「こんにちはーっ。お届け物でーすっ」
『世界』とはきっかけ1つで如何様にも変貌する。見ていなかったものが見えたり、見えていたものが見えなくなったり。
常に変わらない『世界』を見続けるのは、無理なのだろう。
ともあれ、当時私がいる『世界』を変えたきっかけは、1人のスカイランナーの少女だった。
外をぼーっと眺めていた時に突然やってきた少女は「はいっ」と屈託のない笑顔と共にそれを差し出してきた。
「……どうも」
何かよく分からない小包。恐らくあの人へのものだろう。特に感慨はない。こういうのは初めてだが、よくあることなのだろう、と。
そのまま小包を机の上に置き、いつも通りに戻ろうとしたが、その宅配便は帰っていなかった。
「……何か?」
「ねぇ、開けないの?」
不思議なことを聞く人だ。『外』の人間は皆そうなのだろうか?
「人のものだろう? 勝手に開けることはできない」
「あなたのものだよ? だからほら、開けないと」
小さく首を傾げる少女。何を言っているのかが理解できなかった。
「私に?」
「うわ。何だか大人びてる。そんなに小さいんだから、ボクとかでも良いと思うのに」
あなただってそう変わらないだろう。
「あ、そう言われてみればそうだね? アハハ」
驚いた表情をしたかと思ったら、今度は笑顔。忙しい人だ。
ため息を1つ。小包を開ける。中には一冊の本。
「……これは?」
「友好の証ってやつかなっ? あのね、あたし、あなたの友達になりに来たんだ」
……正直に言おう。この時の私はすごい胡散臭いものを見る目をしていたと思う。
「え? あれ? ……あれれ? なんか、あたし変なこといったかなー……っ」
だからか、いきなり慌てだす少女。コロコロと様変わりする様子が、なんだかおかしくて。
無意識に、無自覚に、クスリ、と笑ってしまった。
「あ……やっと笑ってくれた」
「……?」
だから、その時彼女が笑った理由もイマイチ理解できていなかった。
ただ、あの頃の私であれば、何度繰り返してもその理由には届かないだろう。
―――――
※続くかもしれないし、続かないかもしれない
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